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STAND UP STUDENTS Powered by 東京新聞

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いま、わたしたちのまわりで、
起きていること。

毎日の勉強や、遊びに恋愛、就活。普段の暮らしの中では見えてこないたくさんのできごと。環境のことや政治、経済のこと。友達の悩みも、将来への不安も。小さなことも大きなことも全部、きっと大切な、自分たちのこと。

確かなこと。信じること。納得すること。コミュニケーションや、意見の交換。
あたりまえの自由さ、権利。流れてきた情報に頼るのではなくて、自分たちの目で耳で、手で、足で、感動をつかんでいく。

東京新聞『STAND UP STUDENTS』は、これからの社会を生きる若者たちに寄り添い、明日へと立ち向かっていくためのウェブマガジンです。等身大の学生たちのリアルな声や、第一線で活躍する先輩たちの声を集めることで、少しでも、誰かの明日の、生きる知恵やヒントになりたい。

時代を見つめ、絶えずファクトチェックを続けてきた『新聞』というメディアだからこそ伝えられる、『いま』が、ここに集まります。

STUDENT VOICE

増田美菜

19歳

STUDENT VOICE

成功体験ができる拠点を広めたい!

増田美菜 19歳

成功体験ができる拠点を広めたい!

小学5年生の時、近所にレーザーカッターや3Dプリンターを使って自由にものづくりができる『VIVISTOP』という場所があって、そこで、個性豊かなエンジニアやデザイナーの方と一緒にラジコンのように動かせる飛行船を1から作った成功体験が、いまの私の自信や行動力につながっています。無理だと思うことでも「やってみたい」と口に出して行動すれば実現できるのだと気づかせてくれた場所です。いまは起業をして、そういった原体験を次世代につなげるためのものづくりの拠点を広める活動をしています。

新聞やニュース、メディアについて
聞かせてください
実家で紙の新聞を読んでいたのですが、私自身、読む時間がなかなか取れなくなってしまったので、最近は SNS で信用できる新聞社のアカウントをフォローしたりして見ることが増えました。新聞が好きなのは、いろいろな視点のコラムや社説が読めたり、いろいろな世代の読者の声が読めたりするところです。
東京新聞の記者に
聞いてみたいことはありますか?
私は、多くのひとたちが重視している「学習」だけではなく、自分の好きなことや興味のあることを探究する「体験」や、それを提供する場で得られる「つながり」の重要性を広めていきたいと考えています。多くの親が学習にお金をかけることを優先している中、「体験の価値」を草の根的に浸透させていくには、どのように発信していけばいいと思いますか?

掲載日:2025年3月21日
回答 あり

東京新聞 社会部科学班 増井のぞみから

ご質問ありがとうございます。

私は科学記者として、これまで大学や研究機関などの研究者を主に取材してきました。

「企業に比べて大学では好きなことを研究できるから」と男性のベテラン化学者は語りました。女性の若手数学者は「インクの染みが広がる様子を数式で表現したい」とほほ笑みながら話しました。科学者の皆さんは「自分が好きなことを追求する」という点が共通していました。

それで気が付いたんです。知識を増やしたり数字の計算をしたりする「学習」は、好きなことを追求するための手段なんだと。研究者は、世界でまだ誰も見たことがない世界を「体験」するために、時間を費やして研究に励んでいます。

では、「体験の価値」をどのように発信していけばいいでしょうか。インターネットや新聞、テレビなどの情報に満ちあふれる現代だからこそ、人としゃべって手を動かしてものづくりをする「体験の価値」が高まっていると考えます。

ですから、自信を持って発信したらいいと思います。まずは、ものづくりに参加しやすいように、経済的や物理的な障壁をなくすことが大事です。保護者の立場から言えば、参加費がなるべく安くて無料だったり、現地とオンライン両方で参加できたりするとありがたいです。

主催者が誰かも気になるところなので、行政や教育機関と連携すると、信頼感が増すでしょう。最近は、オンラインゲームや生成 AI(人工知能)が話題になっていますね。そういった最新の科学技術のものづくりや使い方だけでなく、そのリスクやトラブル・犯罪に巻き込まれないようにする方法も教えてもらいたいです。

さて、増田さんは自身の活動について「女性なのに」と言われたことはありませんか?

日本では、女性研究者は2割弱と少ないです。なぜでしょう。私は2022年に「なぜ日本は女性研究者が少ないのか」という記事*を書いた際、理系の女性研究者203人にアンケートを行い、その理由を尋ねました(それまで取材した研究者や、大学・企業・研究機関の広報に協力を呼び掛けました)。

*なぜ日本は女性研究者が少ないのか 200人調査で見えた「家庭との両立の難しさ」と「無意識の偏見」
(2022年4月30日 東京すくすく)
https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/work/54655/


回答は「家庭(家事・育児・介護)との両立が困難」が73%と最多でした。2番目に多かったのは「無意識の偏見」で64%。私も女性なのに、このような状況にあまり気付いていなかったことにショックを受けました。

子どもの頃の「女性は理科や数学が苦手」「あまり勉強しなくていい」という周りの態度が志望者を減らし、成人後は「家事・育児・介護は女性」という社会の雰囲気が研究を阻んでいるという指摘もありました。

最後に、私のお話をさせてください。兵庫県明石市の出身です。小学生の頃に遠足で明石市立天文科学館に行き、プラネタリウムの星空を見ることが好きでした。小学校の部活動で科学部に入り、葉っぱを溶かして葉脈のしおりを作ったり、分銅をピンセットでつまんでてんびんに載せて計量したりするのが楽しかったです。

今思えば、大人が科学の楽しさを体験できる機会を提供してくれていたんですね。15年ほど前、愛知県名古屋市で働いていた時は、名古屋市科学館のものづくりボランティアをして、小学生に工作を教えていました。それらの体験が今の私を形作っています。

科学館はどこの自治体にもあるわけではありません。残念ながら、住む地域によって、科学に触れる機会に差があるのが実情です。

性別や住む地域などに関係なく、なるべく公平に体験できる機会を設けることは、国連の持続可能な開発目標「SDGs」の達成にもつながります。増田さんのこれからの「体験の価値」を広める取り組みに期待しています。

増井のぞみ
2006年入社。石川、愛知、福井、茨城で勤務後、2016年から東京本社。社会部で東京ニュースや鉄道、東京電力福島第一原発事故、科学部で小惑星探査機「はやぶさ2」やノーベル賞を取材。2020年の組織改編で科学部が社会部科学班に。最近は科学に加え、高島平団地のタワーマンション建て替え計画と反対運動も取材している。43歳。

回答掲載日:2025年4月30日
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