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STAND UP STUDENTS Powered by 東京新聞

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いま、わたしたちのまわりで、
起きていること。

毎日の勉強や、遊びに恋愛、就活。普段の暮らしの中では見えてこないたくさんのできごと。環境のことや政治、経済のこと。友達の悩みも、将来への不安も。小さなことも大きなことも全部、きっと大切な、自分たちのこと。

確かなこと。信じること。納得すること。コミュニケーションや、意見の交換。
あたりまえの自由さ、権利。流れてきた情報に頼るのではなくて、自分たちの目で耳で、手で、足で、感動をつかんでいく。

東京新聞『STAND UP STUDENTS』は、これからの社会を生きる若者たちに寄り添い、明日へと立ち向かっていくためのウェブマガジンです。等身大の学生たちのリアルな声や、第一線で活躍する先輩たちの声を集めることで、少しでも、誰かの明日の、生きる知恵やヒントになりたい。

時代を見つめ、絶えずファクトチェックを続けてきた『新聞』というメディアだからこそ伝えられる、『いま』が、ここに集まります。

先輩VOICE

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cimai
シマイ

埼玉県幸手市にある『cimai』。店名の通り『姉妹』が営むベーカリーでは、姉の中島真紀子さんによる自家製酵母、そして妹の三浦有紀子さんによるイーストのパンが日々焼かれ、たくさんのパン好きを楽しませています。様々なメディアに取り上げられる彼女たちが提案・発信し続けているのは、衣食住にとって必要なものや、知ってほしい情報。あくまでパン作りも自分たちの思いを伝える手段の1つです。2階にある衣食住の体験空間『shure(シューレ)』では、都会さながらのフルコースを振る舞う食事会や、衣服ブランドの展示会、ヨガのイベントなどを企画し、ベーカリーの枠を超え、地域の人たちを喜ばせています。情報量も競争も多いこの時代に、「パン屋になる」という強い夢を実現させた姉妹は、ニュースや情報に対してどう向き合っているのか。2人に聞いてみました。

どうやってニュースと向き合っていますか?

有紀子さん:私の偏った考え方かもしれないんですけど、印象のよくないニュースは見ないようにしています。気持ちが落ち込んでしまうし、よくない情報に引っ張られてしまって普段の生活に支障をきたしてしまうんです。もちろん情報を全部排除できるわけではないですし、生活の中でニュースが目に入る場面もあるんですが、テレビを家に置かないとか、ネットニュースもなるべく見ないようにしています。ラジオは好きで作業中に聞くので最低限のニュースはそこからですかね。

お店にとって大事なニュースは姉やスタッフと話したり信用できる友人や知人に直接聞いて教えてもらっています。もしそれでもわからなかったら調べるんですが、だいぶ自分たちの『感覚』を信じてるので、これが誰かにとって役に立つようなインタビューになるかどうか…(笑)。

いま気になっている情報はありますか?

有紀子さん:やはり*コロナですね…。小さなお店ですし、やはり不安になりますよね。実際、企画していたイベントは延期に。今は自分たちができるベストを尽くそうと。ただ、どうやったら自分たちやスタッフ、お客様を守れるかなんて本当のところはわからないじゃないですか。だからと言って神経質になり過ぎてもストレスで疲れてしまいますし。

学生じゃなくても『正しい情報』を取捨選択して『情報と向き合う』っていうのは難しいことなんだなって思います。これ以上ネガティブに考えると気持ちがどんどん落ち込んでしまうので、付き合いのある生産者さんなど、身近なつながりを大事にしながら、みんなで意見を交わして考えて、行動に移すというのを繰り返すしかないかなと。あとは何をどう選択するかですよね。自分が納得するための情報を『選択する』ということが大事だと思っています。

*取材は2020年2月20日に行われました。

新聞に対してどう思いますか?

有紀子さん:実家がとっていて親によく「読んだほうがいい」と言われていたのでわりと身近に。1面記事はなんだか難しそうな感じがするので読まず、中面のコラムを選んで読んでましたね。子どもの頃は新聞の中の4コマ漫画ばかり読んでいましたねー(笑)。子どもの頃から興味あることないことに対して極端な性格なんです。

真紀子さん:いろいろな人の視点を知って、生活の中で情報を役に立てられるというのはいいですよね。ちなみに私は情報だけではなく野菜を包むのに役に立ててます(笑)。この紙の質感が好きなんですよね。本当に鮮度が保てるんですよ。

有紀子さん:東京新聞はわりと他の新聞と比べて真実を見ようとしてる印象を受けます。政治に縛られていないというか。関東に根付いた地方紙というのがいいんですかね。

新聞に求めることはありますか?

真紀子さん:政治や事件も大事だと思うんですけど、もっと明るく楽しいニュースを1面に持ってきてほしいですよね。「桜が満開です!」とか取り上げてほしい。

有紀子さん:それすごくいい!その日の朝、新聞を見ると元気が出るようなニュース。そうなればもっと学生も含めていろんな人が見る媒体になるような気がしますね。

お二人の学生時代はどうでした?

有紀子さん:とにかく絵が好きで描きたくて、絵の学校に行ってました。でも、絵に限らず『もの』を作り上げるのが好きだったんですよね。何もないところから1つのものを作っていくことが自分の喜びで…。ただ当時、美術学校の合間にカフェのアルバイトをしてたんですが、ある時、パンづくりへの心に火がついてしまったんですよね。働いていたカフェにベーカリー部門があって、隣の部屋でパンを作っていたんですけど、粉からあんなにおいしいパンを作っててすごい!と、横目で見ててうらやましく思い、いつのまにかこの道に。

就職活動はしましたか?

有紀子さん:してません(笑)。自分は自分なので、自分が行く道を行くだけでした。製菓学校に行くこともなく、憧れていた代官山のパン屋さんに電話をかけて、そのまま『修行』という感じ。そこからはとにかくひたすらパンを作って、同じように表現の場所を探している友達と一緒にユニットを組んでイベントに出店して売ったり。そのうち、私がパン屋で修行する前から別のパン屋で働いていた姉が「私もやりたい」と言ってくれて、イベントのみの販売でしたが、2004年に cimai と言う名前で活動が始まりました。

真紀子さん:私も「就職活動で夢を叶える」みたいな感じではなかったですね。導かれるようにお菓子やパンを作る喜びを、当時のバイト先で知って、そこから憧れのパン屋で働けることに。空いている時間でお店のオーブンを借りて、cimai としてイベント出店するためのパンを焼いていたんですけれど、それだと肩身が狭くて…。自分らしいパンを焼きたいって思っていたところだったんです。

有紀子さん:迷ってる暇はなかったですね。すぐに家でパンを焼きたいって、超巨大な業務用のオーブンを借金して買って、クレーンでオーブンを吊って窓から部屋に入れたんですよね。近所の人たちに「何をしてるんだ」って言われながら(笑)。パンを焼けるようになったのはいいんですが、オーブンが大きいだけで私も肩身は狭く…。お互い不自由だと感じるタイミングがたまたま合って「2人それぞれ自分らしいパンを焼こう」と、2008年に店舗としての『cimai』が始まりました。胸を張って「パン屋」だと言えるようなお店が2人ともほしかったんですよね。

お店はDIYで作ったのですか?

真紀子さん:基礎の部分は工務店さんにお願いしましたが、内装など自分たちでやれるところは自分たちで。

有紀子さん:2人とも計画性がなさすぎて、記念すべきオープンの日に「さぁ!売るぞ!」とパンを焼いたはいいんですけど、パンを置く棚がなかったんですよね(笑)。普通もっと事前にお金をかけて設計図を書いて計画しますよね。でも私たち姉妹は、パッチワーク的に何が足りないのかその時々で埋めていったような感じでした。その時々の気持ちと2人の知恵だけでなんとかはじまったお店という感じなんですが、『やる』って強く決めたら引き寄せられるというか、なんとかなるものですね。

今の店舗もずっと昔から使われずに空いてて、毎回前を通るたびにずっと「いいなあ。ここでパンをやりたいなあ」って思って歩いてたらある日、ずっと今まで出てなかったのに『テナント募集』って出たんですよ! あわてて不動産屋さんに電話して即決しました。その他にも、いろんな縁があって、その縁のおかげでお店がやれていると思っています。『ミラクル』ってあると思うんですが、まずは『自分はどうありたいのか』って決めた人のところに起きるんだなって、実感してます。

意外で自分たちの感覚で突き進んできた2人から学生へのアドバイスってありますか?

有紀子さん:同じことを言うようですが「まわりがこう言ってる」とかではなく、「本当の自分はどうありたいのか」が大事!だと思います。

真紀子さん:そうですね。お金とか地位とか名誉はあくまで手段で、大事なのはどう生きたいかですよね。有名な会社に入ることよりもまずは自分を大事にしないと。自給自足ですごく幸せそうに生きてる友人とかを見てると本当にそう思います。パン屋さんだって店舗を持たずにもっと自由な形で商売してる人たちもどんどん出てきてます。時代が変わってきてるから、若いならなおさら、いろんな生き方、いろんな幸せの形があっていいんだなって。ブログやYouTubeでお金を稼ぐ人だっていてもいいと思うし。何が仕事になるかわからない時代なので、とにかく自分の心のほうを大事にした方がいいと思います。自分が自分らしくいれるところを探して行くべきかと。

有紀子さん:だいたい悩んでいる人って、人の目ばかり気にしていると思うんです。もちろん環境の影響もあって、親とか学校の先生や先輩、上司の存在でも悩むことはあると思います。でも、自分の中から出てきてる「こうしたい」という欲求を大事にしたほうがいいと思うんですよね。

流されそうになったらまず人の意見を聞くではなく「まず自分がどうしたいのか」を問いかける。自問自答だけれど、できるだけ客観的にいろいろな視点で自分を見ること。「なんでできないんだろう」と責めるのではなく「自分は何に喜べるのかな」ということを深く考えてみるのがいいんじゃないかと思います。以前だったら『できない』とか『他の人と違うことをするな』と怒られてましたけど、今は若者のやりたいことをもっと寛容に受け止めてくれる社会だと思います。クラウドファウンディングもあれば、SNS もあるし、自分が「やりたい」って思ったことが実現されるスピードが早いんじゃないですかね?

真紀子さん:今やりたいことが見つからなくても、なんでもいいから自分がひたすら「うれしいな」って思えることを増やしていけば、自分のやりたいことって見つかると思っています。本当になんでもいいです。例えばですけど、毎日行くカフェでもよくて、通っているうちに「私はこのカフェの、ここが好きなんだ」っていうのが見えてくると思うんです。でも深く考えてみると、その店で好きなのは意外とコーヒーの味じゃなくて内装だったりサービスだったり。『好き』に気づいたらすぐに動く。動くことってすごく大事だと思っています。後ろ向きになって迷って模索してしまう時って自分もたくさんあったのでよくわかるんですが、とにかく動かないと始まらないし『次』がない。それが間違ってたらすぐにやり直して、また次に行けばいいですし。情報を選ぶだけではなく、情報を得て、失敗を恐れずに自分の直感で動くこと。チャンスはいくらでもあると思います。年齢もそんなに関係ないですしね。

『好き』に気づくコツはありますか?

真紀子さん:私は個人的には『旅』が大事だと思ってます。国内外関係なく。見たことのない景色を見るとか、いろいろな人たちとたくさん会っていろんな人からいろんな話を聞ける『旅』はとても大事な気がします。それは遠くに行かなくても、毎日会う友達でも、バイト先でも、新しい職場でも、転職する時も同じことだと思います。旅みたいな体験を通じてもらったときめきとかひらめきを自分に生かすって大事なんですよね。

有紀子さん:今、私たちがこんな風に『若者に向けて』っていうテーマで話してますけど、これって実は自分たちのことでもあるなって思っていて、「今、自分がどんな風に生きていたいか」っていうのを最近はよく考えています。もしかしたらこの先、パン屋じゃなくなるかもしれないけれど、軸になるのは「自分がこの先どう過ごしていたいか」なんですよね。まだ私たちも向き合ってる途中です。世の中どう変わっていくかわからないですし、人それぞれ、いろんな可能性があっていいと思うんです。

真紀子さん:でも私は、今は社会とつながる手段が『パン』しかないから、パンを焼きたい。

有紀子さん:それはそう!私もそうよ!ずっとパンを焼いていたいですよ(笑)。

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シマイ
中島真紀子(姉)三浦有紀子(妹)
2004年3月、cimai として店舗を持たずにイベントなどでパンを販売。2008年7月、埼玉県幸手市でパン屋『cimai』を OPEN。衣食住をコンセプトとし、ベーカリーの枠を超えて、パンだけではなく様々なコンテンツを提案している。

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