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STAND UP STUDENTS Powered by 東京新聞

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いま、わたしたちのまわりで、
起きていること。

毎日の勉強や、遊びに恋愛、就活。普段の暮らしの中では見えてこないたくさんのできごと。環境のことや政治、経済のこと。友達の悩みも、将来への不安も。小さなことも大きなことも全部、きっと大切な、自分たちのこと。

確かなこと。信じること。納得すること。コミュニケーションや、意見の交換。
あたりまえの自由さ、権利。流れてきた情報に頼るのではなくて、自分たちの目で耳で、手で、足で、感動をつかんでいく。

東京新聞『STAND UP STUDENTS』は、これからの社会を生きる若者たちに寄り添い、明日へと立ち向かっていくためのウェブマガジンです。等身大の学生たちのリアルな声や、第一線で活躍する先輩たちの声を集めることで、少しでも、誰かの明日の、生きる知恵やヒントになりたい。

時代を見つめ、絶えずファクトチェックを続けてきた『新聞』というメディアだからこそ伝えられる、『いま』が、ここに集まります。

先輩VOICE

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Seiho
セイホー

STAND UP STUDENTS で現在連載中の『先輩 VOICE』では、編集者、エデュケーター、新聞記者、ディレクター、パン屋と、様々なジャンルの表現者の『声』を発信してきました。今回登場するのは、三浦大知、矢野顕子、CHARA、YUKI など、名だたるアーティストたちのサウンドプロデュースも手がけ、世界的に評価されている音楽家の Seiho(セイホー)さん。数ある仕事の中でも強烈な個性が必要な『音楽家』という肩書きを持つ彼は、渋谷で『そのとうり』という住所非公開のおでん屋を営む経営者でもあります。そんな Seiho さんに、普段の情報との向き合い方や学生時代の話を伺いました。

Seihoさん、一体何者ですか?

音楽家です(笑)。音楽が本業と言うとライブで演奏をするアーティストのイメージが強いと思うんですが、他のアーティストに作曲や編曲をするプロデューサーとして音楽を作ることが多いです。もちろんライブもするので、プロデューサーとアーティストを両立してる感じですね。あと、おでん屋をやっていたり、イベントの企画・運営など、ジャンル問わずいろいろな業種のプロジェクトに関わっています。

おでん屋を経営しているというのは驚きです

ですよね(笑)。でも、僕の中では全然おかしくなくて、そもそも音楽を使って自分が伝えたかったことを逆算して分解していくと、ライヴを聴いてもらうってスタイルじゃなくてもいいと思うんですよね。例えば、ライブって人が集まってステージと客席でコミュニケーションしますよね? それはつまり『人が集まって交流する場所を作っている』ってことになると思うんで、おでん屋も自然で…。 楽曲制作やDJも、言い方を変えれば『その空間のムードを作る』ということなので、ムードメーカーとしての能力を他の現場でも生かせると思っています。なので、音楽の延長線上にいながらも、ジャンルの垣根を意識せずどんどん外に出て仕事するようにしています。

Seihoさんが音楽を始めたきっかけは?

両親がジャズや洋楽が好きで、自宅でずっと音楽が流れていたんですよね。中学くらいまで J-POP っていう存在があることを知らなかったんですよ。「日本人も音楽やるんだ…」って(笑)。音楽は子どもの頃から親とのコミュニケーションツールでしたね。休みの日は家族でジャズのレコードを買いに行って、夕飯を食べながらみんなでそれを聴くという…。そのうち、聴いてる音を鳴らしてみたくなって、小2の時にギターを買ったのがきっかけですね。

ただ、高校3年の時に色々なプレイヤーと演奏して「あれ?もしかしてこれ限界?」と思い始めて。しかも当時、海外の方と一緒に演奏する機会も増えてきてわかるんですけど「全く体つきも違うし、鳴ってる音も違うし無理やわ」って。それが大きな挫折となって、楽器はやめて、コンピューターで音楽を作る今のスタイルに転身しました。中学の頃からなんとなく家のコンピューターで音楽は作っていたこともあって、プレイヤーよりクリエイターが自分には向いているのかなって。

普段はどうやってニュースを得ていますか?

特に決まった情報の取得方法はなくて、ざっと SNS を流し見することが多かったんですが、去年くらいからですかね、あんまり SNS も見なくなりましたね。最近の SNS はなんか、みんな間違わないよう、正論を言おうとお茶を濁してる感じ(笑)。ちょっと他の人と違うことを発信しようとすると、エッジが立ちすぎてわざと炎上を狙っているような感じになってしまうし、いろいろなバイアスがかかってしまうので、話したい人とは、顔を合わせて向き合って話した方がいいなって思うようになりました。

僕らって意外と相手の顔色とか、相手との関係性で言葉を選んだり伝え方を変えたりするじゃないですか。友達とオカンとじゃ選ぶ言葉も変わってくる。そう思った時に、なるべく『顔』は見えていた方がいいなと思うので、本当の情報を得たいときは、直接聞くようにしています。例えばお店の経営のことだったら知り合いの経営者や税理士さんとか、そのジャンルに詳しい人。コロナのことなら医療従事者。ただ、音楽のことに関しては、プレイヤーよりも音楽に詳しいヤツっていて、そういう音楽マニアの意見の方が案外おもしろくて、積極的に意見を聞いて取り入れるようにしてます。

これって例えば「日本を良くするためのアイデアをアフリカの方に聞いてみる」のような突飛な発想、いわゆるポストモダンではなく、「アフリカにいる日本のアニメオタク」のような、世界のどこかに最適な解やアドバイスを持っている人がいるかもしれないし、その人を探すことが大事なのではないのかなって。まぁこの例は極端かもしれないですけど、つまりコミュニケーションの可能性を狭めないというか、意外と思いもよらない人が自分にとって有益な情報を持っていたりする。だから、僕らがこの先やるべきなのは、SNS でつながることよりも、そういう一次情報をつかんでる人にどのくらい出会えるかってことですよね。いろんな不特定多数の人が訪れる『おでん屋』をやってる理由もそこに重なってくると思います。「自分が好きな人」の情報だけ知ろうとせずに、いろんな人の意見をフラットに聞ける機会があるといいですね。

多くの学生たちが SNS で情報を得ているんですが、SNS に縛られているという感想も抱いています。

SNS やるのはいいんですけど、何かわからないことがあった時にすぐスマホを取り出して調べるっていう行為は、僕も気をつけないとなと思っています。例えば『焼きそばの作り方』がわからないってなったらスマホで調べちゃうじゃないですか。失敗するかもしれないけれど自分でやってみるとか、オカンに電話して聞いてみるとか、検索以外の選択肢にも目を配ることは大事だと思います。

新聞は読みますか?

大学の頃、ゼミの授業が『新聞』で毎朝のように読んでました。その日の時事ネタを持ち寄ってディスカッションするんです。その時にわかったんですが、新聞って、隣り合わせの記事が、まるで同じ価値があるかのように並べられてるじゃないですか。本当は深度が違うかもしれないし、読む人によってその記事が有効かどうかもわからない。だから、読み慣れていないと、自分に関係ない記事も全部読まなくてはいけなくなるんですよね。細かく追っていってしまうと時間もかかるし、読むの疲れますよね。本当はざっと読んで、大切な部分を見つけて、深堀りしていけばいいんですけどね。学生時代に新聞を読んだおかげで、今でもその能力が役に立ってると思います。情報を選ぶ力が育まれました。

それに新聞ってめちゃくちゃリスク張ってるじゃないですか。SNS だったら削除すればまぁ大丈夫ですけど、新聞は間違えられないですからね。しかもそれを毎日のようにやってるんですもんね。その点では信頼できるメディアだなと思ってます。

Seihoさんって就職活動はしましたか?

全くですね。してないです。大学卒業してすぐに音楽の道に。そもそも高校卒業したら音大に行くか、海外の音楽系の大学に行くか迷っていたんですけど、最初に話したように挫折してあきらめて、あわてて大学行くことにしたので。結果的に経営学部で経営を学ぶことになるんですが、入学してからも音楽のことで頭いっぱいだったんで、教員リストを見て、趣味の欄に「音楽好き」って書いてる人に片っ端から会いに行って、自分の曲が入った CD を渡して、「単位ください!」って言ってましたね(笑)。勉強する時間を、音楽を作る時間にしたかったんですよね。

大学を卒業してすぐに音楽家に?

当時、大阪で一緒に頑張っていた友人たちの音楽を発信するレーベルを始めました。2011年ですね。当時、mp3 の配信で音楽をリリースするネットレーベルが増えてきているのを横目で見ていて、CDやプロダクトのデザイン、手触りを大事にしたレーベルにしたいなと。その当時、レコードショップで働いていた人たちも、配信にパイを取られてることをどこか認識していて、だからこそ面白いことしたいと思ってくれるバイヤーさんも多くて、一緒に発信しているうちに徐々に認知度が上がっていきました。

大学を出てすぐに音楽業界へ進むことに不安はなかったですか?

ないですね。ない。4割くらいは自信で、残りの6割は「困ったらなんとかなる」って思ってます。困った時になんとかならない気がする人は、音楽家になるリスクを背負わないと思うんですよね。僕はこれまで、音楽をやっていたおかげでつながったコミュニティーがいろんなところにあるので、なんとかなるって信じてます。困った時は助け合う。音楽をやる上で、お金を稼ぐのも大事だけれど、人とのつながりやその人たちとの時間も同じくらい大事にしています。

学生たちに対して何かメッセージをお願いします。

「好きなことを仕事にしたい」ってよく聞くんですけど、好きなことを仕事にしない方がいいと思うんです。好きな音楽を仕事にしている僕に言われたくないだろうと思うし、僕が言うのは変だと思うんですが。

好きとか嫌いとかじゃなく「どうしてもやってしまうこと」を仕事にするのがいいと思うんです。「明日は朝早いから寝なきゃいけないのに、つい会ってしまう人」って『好きな人』じゃないですか。ついやってしまう『行動』の方を大事にした方がいいんじゃないかなと思うんです。学生の間に好きなことを仕事にしようと判断を強いられても、両立できるかどうか不安だろうしプレッシャーになってしまう。好きなことをするのとお金を稼ぐのは『別』ってことを考えないといけない。だから好きは好きで自分の中に取っておいて、「ついしちゃうこと」を仕事にできる方が幸せなはずです。自分が好きなことと、自分が人より少しでも得意なことを見極めて、「得意なこと」を仕事にしていくといいんじゃないかって思います。ついつい掃除しちゃう人。ついついプレゼンを張り切っちゃう人。ついつい周りを笑顔にしちゃう人。いろいろあると思うので。

って偉そうに言いましたけど、個人的にはフィジカルにものを作って売ってナンボでしょっていうのが本音です。大阪生まれの商人ですからね(笑)。

Seiho
セイホー
米 Pitchfork や米 FADER など多くの海外メディアからの注目されながら、LOW END THEORY、SXSW といった海外主要イベントへ出演。また Flying Lotus、 Disclosure、Matthew Herbert、Cashmere Cat らとのツアー や、三浦大知、矢野顕子、KID FRESINO、PUNPEE らとの共演やプロデュース、また Avec Avec とのポップデュオ Sugar’s Campaign などで知られる大阪出身のアーティスト、プロデューサー。

http://seihooo.com

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