森林は私たちの暮らしの一部
文:小川夏帆
絵:織田知里
私は今、森林を学ぶことができる大学に通っている。
自然のある場所が昔から好きで、今でもよく旅に出かける。幼い頃に両親がキャンプに何度も連れて行ってくれたことがきっかけで、自然や森に漠然と興味が湧き、そこからニュースを見て「地球温暖化」や「エコ」についても徐々に興味を持つようになった。
森林への興味が高まった一番のきっかけは、中学2年生のときに屋久島での生物多様性研修に参加したことだ。
ガジュマルや屋久杉を見たり、夜の森へ出かけたり、C.W.ニコルさんのお話を直接聞いたりして、森林の大切さを肌で感じた。屋久島での体験が今の自分のルーツになっているともいえる。
大学生になってから「地域おこし」のボランティア活動を通じて島に行く機会がある。その中でも印象的だったのが三宅島に行ったときのことだ。ボランティアに参加しているメンバーに、今の日本の森は適伐期を迎えているから植林をするよりは伐(き)って積極的に使わないといけないことや、木を無駄遣いするなといわれている象徴である割り箸は間伐材を使っているからエコであることを伝えた。
その時のメンバーの反応は
「知らなかった」
「木を伐るのは悪だと思っていた」
というものだった。森林は私にとっては身近だが、一般的には遠い存在なのだと感じた。
大学で同じ分野を学ぶ友達の間でも、知識ややる気の度合には差がある。「森林・林業白書」を知らないという友だちに驚いたこともある。同じ分野を学ぶ人にも、もしかしたら森林は遠いものと思われているのかもしれない。
私が所属する研究室では、荒れた土地を緑化したりして減災につなげるような山づくりなど、地球温暖化防止についての研究をしている。自分の学んだことを生かしてより多くの人に森林に興味を持ってもらいたい、身近に感じてもらいたいという気持ちが根底にある。
自然の多い場所へ出かけるときは、電車や車など交通機関を使わなければ行くことができない。道路や線路を作ることは自然とトレードオフの関係にあると気づいてから、道路関係の仕事はおもしろいのではないかと思うようになった。道がなければその先にあるものに気づくこともできない。道路の緑化も大事な仕事だと思う。
緑化については正直、がんばって景観に溶け込ませた「異質な自然」というイメージがあったが、研究室で在来の植物や樹木を使うなど、より自然の状態に戻るような方法を知って、見方が変わった。
「緑化」は今の時代に求められている仕事でもあり、人工物を造ったらその分だけ自然に戻すことは人間の使命だと思う。
森林をめぐっては様々な仕事があり、それぞれが人々の生活に密着していることを知ってほしい。
そしてまずは自分の友だちの範囲から「森林本来の魅力」を知ってもらえるよう、できる限り自然のある場所に出かける機会をつくり、自分も勉強して、それを正しく伝えられるよう努めたい。
2022年10月28日
※ エッセイへのご感想やご意見がありましたら STAND UP STUDENTS の公式インスタグラム へ DM でお送りいただくか、匿名でも投稿できるフォームにお送りください。STAND UP STUDENTS では、今後も、学生たちがさまざまな視点で意見や考えを交換し合える場や機会を用意していきます。お気軽にご参加ください。
- 小川夏帆
- Natsuho Ogawa
----
イラスト:織田知里
https://www.instagram.com/odachisato/