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STAND UP STUDENTS Powered by 東京新聞

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いま、わたしたちのまわりで、
起きていること。

毎日の勉強や、遊びに恋愛、就活。普段の暮らしの中では見えてこないたくさんのできごと。環境のことや政治、経済のこと。友達の悩みも、将来への不安も。小さなことも大きなことも全部、きっと大切な、自分たちのこと。

確かなこと。信じること。納得すること。コミュニケーションや、意見の交換。
あたりまえの自由さ、権利。流れてきた情報に頼るのではなくて、自分たちの目で耳で、手で、足で、感動をつかんでいく。

東京新聞『STAND UP STUDENTS』は、これからの社会を生きる若者たちに寄り添い、明日へと立ち向かっていくためのウェブマガジンです。等身大の学生たちのリアルな声や、第一線で活躍する先輩たちの声を集めることで、少しでも、誰かの明日の、生きる知恵やヒントになりたい。

時代を見つめ、絶えずファクトチェックを続けてきた『新聞』というメディアだからこそ伝えられる、『いま』が、ここに集まります。

先輩VOICE

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野村由芽
YUME NOMURA

「自分らしく生きる女性を祝福するライフ&カルチャーコミュニティ」をコンセプトに、女性をとりまくカルチャーや思想を発信しているウェブマガジン『She is(シーイズ)』。2017年の秋にスタートし、さまざまな領域で自分の軸を持ちながら活動している『Girlfriends』たちとともに、メディアを超えた場づくりや、暮らしを彩るギフトを生み出し、届けています。少数精鋭でも丁寧に編まれる充実のコンテンツ、個性豊かなコミュニティ、ネットワークを築き上げるメディアの編集長は、ニュースとどう向き合っているのか。『女性』を軸にコミュニティメディアを運営する野村由芽さんに話を伺いました。

さっそくですが、新聞ってとってますか?

今は特に定期購読をしていないのですが、ネットや SNS 経由で新聞社のサイトに飛んで、ニュースをチェックするということが最近増えて来た気がします。キュレーションサイトなどでも信頼性が高いなと思える記事の情報元が新聞であることが多いというか。編集者という職業柄、『情報元』がどこなのかは気にしますし、気になります。よく言われる話でもありますが、同じニュースでも見出しの作り方一つで全く情報の伝わり方が変わってきますよね。ちょっとした言葉の選び方や使い方でも「あ、ここはこう伝えるんだ」と発見がある。そのメディアの個性の部分が良くも悪くも気になります。

普段はどういう方法でニュースを得ることが多いですか?

SNS が多いですね。特に Twitter のリスト機能を使って、自分の興味がある事柄を発信しているひとをリスト化して、情報を管理しています。「発信者が誰か」というのは情報を得る上で大切にしていますね。SNS のタイムラインのフィードは、自分が望んでいる情報だけが届くわけではありませんし、時には暴力的な表現にふいに出会ってしまったりすることもあるので、そのことを踏まえたうえで自分がどう付き合っていくのか、自分に合った距離を知って管理するのが大切なのかなと。それに例えばTwitter には140文字という制限があるので、どうしても情報を断片的に受け取る傾向があります。「140文字で伝えられることには限界がある」と多くの人が体感した上で発信しているはずですが、その『制限』とどう向き合うかは人それぞれですよね。「制限があるから断定的な表現を使ってなるべくわかりやすく」という人もいれば、「制限があるから言い切型の文体を避けて余白を残す」という人もいる。その姿勢が人によって異なるということを理解した上で SNS と向き合う必要があるのかなと。もちろん前提として、思いがけない素敵な情報に出会えるという良さがあるんですけどね。

She is の Girlfriends たちには SNS で出会うこともありますか?

そうですね。すでに雑誌などのメディアに出て活躍されてる方もいるんですけど、そうではない方も SNS で発信してるひとの中にはすてきな方たちがたくさんいて。ふとタイムラインに流れてきたり、誰かが紹介していて目にしたり、SNSを通じてお声がけさせてもらうことも多いですね。

She is の編集長という立場で気になっているニュースのジャンルってありますか?

女性をとりまく動きについてはやはり気にしています。ただ、その問題を突き詰めると、女性に限らず一人ひとりの権利や尊厳について考えていくことになるので、『女性』という軸を自分の中に置くことで、自然と社会全体に目を向けることになります。例えば女性に関する記事を読み解いていくうちに、政治や経済のことにもたどりつく。これは女性に限った話ではなく、社会で起きていることであれば、すべてのニュースは横でつながっているのだと思います。そして『女性』という名前の存在はいなくて、大切なのはそのひと個人が何を発信しているか、どんな人生を歩んでいるか、ということなんですよね。「30代の女性たちが言っている」のではなく「 “30代の女性”でもあるこの個人はこう言ってる」という感覚でしょうか。それでいうと、ニュースと向き合うのに、1つ自分の興味のある『軸』を決めて読んでみると、最終的には『社会全体』と『個人』に目が向くことになるのではないかなと思います。

フェイクニュースやヘイトを目にすることが増えてきました。ニュースの取捨選択で悩んでいる学生にアドバイスはありますか?

「自分が何に悩んでいるかを自分の言葉でちゃんと分解してみる」のが大事だと思います。「ニュースの取捨選択で悩んでいる」という悩みを分解するならば、自分は「正しい情報がほしい」のか「ほしい情報があるはずなのにみつからない」のかをまず見極める。取捨選択する前に、「自分はどんな情報をなぜ必要としているのか?」という自分の状態を知ろうとすることが必要な気がします。さらに言うと、「取捨選択できていない」という判断ができている状態がその人の現在地で、その自分に気づいているのは心強いことだと感じます。世の中の全部のことを取捨選択することは不可能だし、そもそも私たちは全てを知ることはできません。質問してくださっている方は学生さんということですが、私は今も誰かと話をすればするほど、話を聞けば聞くほど、自分の無知が恥かしくなります。でも知らない自分さえも知ろうとすること、自分は間違ってるかもしれないと常に問うことができていれば、きっと前に進めると思います。

野村さんの学生時代ってどうでした? ニュースとか気にしてましたか?

今から考えると恥ずかしいですが……正直に言うと、ほとんど気にしていなかったと思います。自分にとって関心があることは調べていましたけど、今ほどではありません。それに私たちの学生時代は、もちろん個人差はあると思いますが、今の学生よりももっと社会や政治の問題に関わろうとする動きが少なかったように感じますし、ニュースの存在ももっと遠かった気がします。私が大学生の頃は2000年代の後半で、その頃に Twitter が日本でも使われはじめて、そこから約10年かけて社会に向き合う学生たちの活動がどんどん身近に感じられるようになってきた実感があります。学生時代の私は、新しい情報に貪欲になるというよりも、過去に向いていたというか、音楽でも本でも、映画でも、自分の興味があることを深く掘り下げていって、その中での新しい発見や気づきに刺激を感じていましたね。自分の興味がどこに向いてるかを知って、自分の輪郭を知ることの方が大事でした。それをまずは集めて、自分の『大事なもの』は世の中の何と接続しているのだろう?っていうステップを踏んでいたと思います。その繰り返しを経て、自分の輪郭がある程度見えてきた最近になってやっと社会や政治に関心を持つようになりましたし、ニュースを積極的に得るようになりました。

学生のころから編集の世界を目指していましたか?

自分がやりたいことに名前をあてはめるなら編集者なのかなと思って出版社を受けたのですが、筆記試験でほぼすべて落ちましたね。ただ、いま思えば当たり前で、当時は「なぜ就職しなきゃいけないのか」が腑に落ちず、筆記試験の対策もまともにしていなくて。みんな同じタイミングで一斉に就活をしないといけないことにも強い違和感を感じていて「納得いかないなぁ」って思っているうちに留年してしまって…。子どもの頃から、自分の中に「なんで?」という疑問があると前に進めないところがあって、考えがまとまるまで時間がかかりましたね。それで1年留年して就職が決まった後は、いろんな日雇いバイトをして時間を過ごしました。宝くじ売り場とか、病院の清掃員とか、スーパーの試食係とか。就職先は出版ではなく広告の会社だったのですが、人は自分自身の目でしかものごとを見ることができないので、それならば「大学生の自分」や「これから広告会社に行く自分」ではない様々な人の目線に立って、世界を見てみたいと思いました。もしかしたら、新聞を読むっていうのもそれに近いところがあるかもしれません。いろいろなひとたちの人生を知って、その視点を自分の中に取り入れる。そうすることで、逆に自分が大切にしていること、大切にしたいことも見えてきますし、それは例えば、自分がこれからどんなふうに働こうかとか、どういう人生を歩もうかという指針を見つけることにもつながるんじゃないかなと思います。

「なんで?」っていう疑問が行動のモチベーションにつながってるんですね。

そうですね。広告の会社で働いているときには、例えば「どうして“たくさん” 売ることが必要なのだろう……?」と悩んでしまう瞬間も多く、私は「届くべき人に、その人の心に必要なことやものが届くこと」を大切にしたいのだなと改めて実感しました。子どもの頃からの「なんで?」という疑問は、いまの『She is』の場所づくりにつながってると思います。取材も「なんで?」という想いが膨らんではじまるし、友達と話す時も、パートナーと話す時も「なんで?どうして?」がすごく多いので、ふだんの会話でも「取材みたい!」と言われることがわりとありますね……大丈夫かな……。でもどこかで、問いかけている自分の視点が、いつか少しでも相手の支えになったらいいなとおこがましくも思ったりしているんです。

最後に、新聞に対して思うことを聞かせてください。

自分たちの足でしっかりと一次情報を取りに行っていること、向き合っていること、取材を何度も重ねること、歴史があってノウハウが蓄積されていること、そういう手数というかレイヤーの厚さが信頼につながっているなと思います。そしてそれは新聞に限らず、本来であればどの媒体でもできることなので、学ぶところが多いと感じます。『She is』の記事は、一緒に立ち上げた竹中万季と二人で企画・編集をしているので、今は少人数でじっくり時間をかけて、わかりやすさというより、わかりにくいかもしれないけれど読んでる方の思考や感情が膨らむような記事を発信したいと考えています。そういった自分たちの姿勢を大切にしながらも、毎日数々の新しい記事が手厚い根拠に裏付けされた状態で発行される新聞の存在は、個人としても、編集者としても、心強いことだと感じています。

記事公開日:2020年4月14日

野村由芽
YUME NOMURA
1986年生まれ。編集者。カルチャーメディア『CINRA.NET』においてクリエイターやアーティストの取材・編集、アジアのバイリンガルシティガイド『HereNow』の東京キュレーターなどを務め、2017年に『自分らしく生きる女性を祝福するライフ&カルチャーコミュニティ“She is”』を竹中万季と二人で立ち上げ、編集長に就任。

She is
https://sheishere.jp

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