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STAND UP STUDENTS Powered by 東京新聞

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いま、わたしたちのまわりで、
起きていること。

毎日の勉強や、遊びに恋愛、就活。普段の暮らしの中では見えてこないたくさんのできごと。環境のことや政治、経済のこと。友達の悩みも、将来への不安も。小さなことも大きなことも全部、きっと大切な、自分たちのこと。

確かなこと。信じること。納得すること。コミュニケーションや、意見の交換。
あたりまえの自由さ、権利。流れてきた情報に頼るのではなくて、自分たちの目で耳で、手で、足で、感動をつかんでいく。

東京新聞『STAND UP STUDENTS』は、これからの社会を生きる若者たちに寄り添い、明日へと立ち向かっていくためのウェブマガジンです。等身大の学生たちのリアルな声や、第一線で活躍する先輩たちの声を集めることで、少しでも、誰かの明日の、生きる知恵やヒントになりたい。

時代を見つめ、絶えずファクトチェックを続けてきた『新聞』というメディアだからこそ伝えられる、『いま』が、ここに集まります。

STUDENT NOTE

09
河西里花子
Rikako Kasai

小さな声に耳を傾け、社会のこと、これからのこと、身近なことを一緒になって考えていくために、学生が書いたエッセイを毎月『STUDENT NOTE』としてお届けしています。

日々の暮らしの中で思ったこと。SNS やニュースを通じて感じたこと。家族や友人と話して気づいたこと。もやもやしたままのこと。同世代の学生が綴る言葉が、誰かと意見を交わしたり、考えたりする<きっかけ>になればと思っています。

第9回は、自身の体験や、ドキュメンタリー番組がきっかけとなって「違いを認めて、互いを知る」ということの大切さに気づいた河西里花子さんによるエッセイです。

誰もが『偏見』を持ってしまうから
文:河西里花子
絵:石橋 暸


私はよくドキュメンタリー番組を見たり、ノンフィクションの本を読んだりしている。

世界にはいろんな人がいる。性別、人種、宗教だけでなく学歴や収入など、人にはたくさんの違いがあり、同じ人間なんて一人もいない。それなのに私たちは、ホームレスだから、少年院にいたからと言って、先入観によって人をひとくくりに決めつけて、あまり関わらないようにしてしまう傾向がある。

ドキュメンタリーを見ると、普段あまり関わりのない人の、自分とは全く異なる価値観や考え方を知ることができる。

私がドキュメンタリーを見るようになったきっかけは、ある出来事だった。

私は以前、選挙活動のスタッフとしてビラ配りのアルバイトをしていた。8時から20時まで、いろんな場所で、私は目の前を通り過ぎる全ての人にビラを配り、声をかけた。

ある日、いつも通り駅前でビラを配っていると、一人の男性が声をかけてきた。彼は少し身なりが汚れていて、たくさんの荷物を持つ、いわゆるホームレスの方だった。彼は私に「最近こっちに移ってきたから、どういう人が候補者にいるのか勉強したい」と言い、手を差し出した。その時、私はとっさに手を引き、険しい顔になりながら、恐る恐るビラを渡した。なぜなら私が、ホームレス=危ない、汚い、怖いといった偏見を持っていたからだ。

私がホームレスの方に偏見を持つようになったのは、ある恐怖を感じた体験からだった。ある日、私は姉と一緒にカフェで買った飲み物を飲みながら、オープンスペースの椅子に座っていた。その近くで、たくさんの荷物を抱えたホームレスの方が私たちのことを見て、小さい声でぶつぶつと話していた。すると、その方はいきなり姉の足を思い切り踏んで、大きな声で「ふざけんなっ!」と言い放った。私たちは、なんでその方が怒ったのか、私たちの何に気を悪くしてしまったのかわからず、動揺してしまった。私は恐怖のあまり、ただ茫然とするだけだったが、姉が私に「もう移動しよう」と言い、その方から距離を取った。この経験から、私はホームレスの方に対して、危ない、怖い、近寄りがたいといった印象を抱くようになってしまった。

私はビラ配りから帰宅して、両親に、ホームレスのような人が話しかけてきてとても怖かった、と、その日の出来事を話した。すると母が、ホームレスの中にも雑誌を売ってホームレスから脱しようと頑張っている人がいると教えてくれた。父もよくホームレスの方から雑誌を買って応援しているという。私はそのような人がいることを初めて知り、ホームレスの自立支援について調べた。そして雑誌の売り上げの一部が販売者に還元される自立支援事業を行う「認定NPO法人ビックイシュー基金」という団体があることを知った。


それまで私は、道端で雑誌を売ろうと声をかけてくる人に対して、目を合わせたら危ないことに巻き込まれるかもしれない、と先入観を持って無視し続けてきた。

今まで深く知ろうとせず、偏見を持っていたこと、また無知な自分に憤りを感じた。そして、あの時、嫌な態度をとってしまってことを後悔した。また、自分自身もビラ配りのアルバイトをして、声をかけても無視されたときの悲しさを実体験し、相手に対して同じことをやってしまっていたことを深く反省した。

そこから私は、ホームレスだけでなく、普段あまり接する機会がない人や、偏見を持たれている人について知っていきたいと思うようになり、ドキュメンタリーに興味を持つようになった。

その後、私はホームレスの方に密着したドキュメンタリー番組を見た。その番組では、ホームレスの方々が必死に働く姿が映し出されていた。一日中街を歩き回って空き缶をお金に換えたり、拾った雑誌や段ボールを売ることでお金を稼いでいた。

だが、新型コロナウイルスの感染拡大によってホームレスだけでなく生活困窮者が大幅に増えた。自立のために日々奮闘していたホームレスの稼ぎも減り、厳しい生活を強いられている。そして貧困や格差是正のためにコロナ対策や経済対策について政策議論が活発化している。このホームレスの問題を、他人事だと思わず、もっと関心を持つべきだと思う。

昨年、メンタリストのDaiGo氏が「ホームレスの命はどうでもいい」と差別的な発言をしたことが問題になっていて、私はとても悲しい気持ちになった。彼はただ自分の価値観を述べただけなのだろう。同じように思っている人もいるかもしれない。でもホームレスだからといって人間の価値は変わらない。数々のメディアに出て、SNSの影響力がある人こそ、こういった問題に対して今後どのように取り組んでいけばいいか、多くの人に発信していくべきだと思った。

さらに私は「女子少年院の少女たち」という本を読んで、考えに変化が生まれた。その本では女子少年院を退院した少女たちが更生するまでが綴られている。今の日本は一度の失敗や過ちさえも許されない社会である。そのため、過去に犯罪歴がある人たちは社会で受け入れられるハードルが高く、3人に1人が再犯してしまうと書かれていた。


私は少年少女が更生するには、社会生活を再スタートするための多くの人たちの理解がとても大切で、自分の「当たり前」を全ての人の「当たり前」だと思ってはいけないと考えるようになった。多くの少年少女が、社会のものごとの是非を十分に知ることができない環境で育っている。私たちはそのことをしっかりと受け止めて、理解するべきである。

もしかしたら私たちも今後、どこかで失敗や間違った選択をしてしまうかもしれない。しかし過去は変えられない。重要なのは自分の過去を、今後の人生にどう生かすかだと、私は思う。

私は多種多様な価値観や生き方を理解して、差別がない社会へと変えていきたい。そのためには、多くの人が社会に目を向け、偏見を取り払って「人を知る」ことが重要だと思う。そして過去の失敗や過ちを引きずらず、自分自身を大切にして、一度しかない人生を、全ての人に笑顔で幸せに過ごしてほしい。

誰もが無意識のうちに持ってしまう偏見。私の文章を読んで少しでも考え方を変えるきっかけになれば嬉しく思う。

この世に同じ人なんて一人もいない。

私は私。相手は相手。違いを認めて、互いを知る。

過去を受け止めれば、未来は自分次第で切り開ける。

自分自身を愛して自分のペースで今日も生きていこう。



2022年1月21日

※ エッセイへのご感想やご意見がありましたら STAND UP STUDENTS の公式インスタグラム へ DM でお送りください。STAND UP STUDENTS では、今後も、学生たちがさまざまな視点で意見や考えを交換し合える場や機会を用意していきます。お気軽にご参加ください。

河西里花子
Rikako Kasai
2000年生まれ。大学3年生。
中学3年生の時、初めてドイツを訪れて世界の広さを痛感。日本と異なる文化や習慣に魅了されて、大学ではドイツ語学科を専攻。趣味はチアダンス、推し活動、新聞を読むこと。特にコラムは、いろいろな人の価値観を知ることができるので好んで読んでいます。

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イラスト:石橋 暸
https://www.instagram.com/ryo__ishibashi

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