〇〇ゼミ

ゲスト講師:能條桃子(NO YOUTH NO JAPAN)

〇〇ゼミ

ゲスト講師:能條桃子(NO YOUTH NO JAPAN)

テーマ:学生が「政治」に関わるには

2026年3月、STAND UP STUDENTS では、若い世代の政治参加を促進する NO YOUTH NO JAPAN の代表理事・能條桃子さんをゲスト講師に招いて1日限りの特別授業『〇〇ゼミ』を行いました。会場は渋谷PARCO 9階にある学びの拠点「GAKU」。政治参加、ジェンダーギャップなどのキーワードをもとに、学生のみなさんの抱えるモヤモヤと向き合う時間となりました。

写真:熊谷義朋 協力:GAKU

2026.05.28 UPDATE

〇〇ゼミの「〇〇(まるまる)」とは、ぽっかり空いた穴のようなもの。声にならない思いや感情、社会に対する漠然とした不安、失敗することへの恐怖心、そして違和感…。今回の授業が、みなさんの心の中にあるそれぞれの「穴」を埋め合わせていくような、自由な対話、そしてコミュニケーションになればと思い、企画しました。

レポートは前編と後編に分かれます。前編は、能條さんがどんなきっかけで、どんな思いで活動を続けているのか、それぞれのプロジェクトを通じて伝えていきます。後編は、同世代で社会問題について話せる機会を、と行われたワークショップで参加者のみなさんから出てきた「モヤモヤ」を共有することで、これを読む人も「一緒に考える」ということができればと考えています。ゼミを受講する気持ちで、じっくり読み進めてみてください。

前編:
動けば「変わる」

目次

能條桃子Momoko Nojo

1998年生まれ。2019年、若者の投票率が80%を超えるデンマークに留学し、若い世代の政治参加を促進する NO YOUTH NO JAPAN を設立。Instagram (現在フォロワー約11万人)での選挙や政治、社会の発信活動をはじめ、若者が声を届けその声が響く社会を目指して、アドボカシー活動、自治体・企業・シンクタンクとの協働などを展開中。2022年、政治分野のジェンダーギャップ解消を目指し、20代・30代の地方選挙への立候補を呼びかけ一緒に支援するムーブメント FIFTYS PROJECT を行う一般社団法人 NewScene を設立。慶應義塾大学院 経済学研究科 修士卒。TIME誌の次世代の100人 #TIME100NEXT 2022選出。

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どうして若者の投票率が低いのか

能條さん:みなさんこんにちは。NO YOUTH NO JAPAN の能條桃子です。今日1日よろしくお願いします。今回のゼミは前半と後半に分かれるのですが、前半は私がこれまで何をしてきたかという紹介をさせていただきます。後半は、事前のアンケートで、みなさんあまり同世代のひとたちと政治のことや社会課題について話せる機会がないとのことでしたので、ワークショップ形式でチームになっていただき普段考えていることや思っていることを話し合えればと思っています。

まずは自己紹介を兼ねて私の話をさせていただけたらと思うのですが、これから私が話すことに100%同意したり納得したりしてもらわなくてよくて、あくまでひとつの例として「こういうひとがいるんだ」という参考にしていただければと思っています。

まず私は1998年生まれです。みなさんより10歳くらい年上かもしれません。大学入学は2016年。大学に5年、大学院に2年通って2023年に卒業するのですが、大学3年の2019年に NO YOUTH NO JAPAN を立ち上げ、それから今日まで活動してきました。

はじめは、若いひとたちに向けて政治参加を促進するために Instagram でわかりやすく政治のことを伝えるという活動からはじめました。ただ、やっていく中で「どうして若者の投票率が低いのか」を議員さんはじめいろいろなひとに聞かれるようになったんですね。最初は「若いひとたちの政治教育が足りていない」とか「考える時間が取れない」とか「政治に触れる機会がない」とか、若いひとたち側の問題かなと思っていたんですね。でも、選挙ポスターを見ても若者の顔なんてなくて、公約を見てもまるで若者の生活のことなんか考えていないかのようですよね。そこで「若者が関心を持てないのは当たり前なんじゃないか」と気づくんです。

投票は10年前に18歳からでもできるようになりました。でも選挙に出られる年齢というのは、戦後80年間変わらず知事や参議院議員は30歳で、他の選挙は25歳からなんです。そもそも政治の世界に若者が介入しづらい。この事実も同じくらい問題なんじゃないかと思って立ち上げたのが「立候補年齢引き下げプロジェクト」です。法律で決まっている年齢を変えるための活動を行っています。

次に2022年に「FIFTYS PROJECT」というのを立ち上げます。これは「ジェンダー平等」についての活動です。日本の政治を見た時に、年齢もそうですけど、女性も少ない、特に若い女性が少ないのが現状です。ならば私たちが応援したいと思える女性、ならびにXジェンダー、ノンバイナリーの方々を地方議会に送り出すための応援をしたいなと思い NPO を立ち上げました。助成金や寄付で運営しています。

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「思想強いね」と言われても

ではなぜこのような活動をするようになったかというと、2019年にデンマークに留学したことがきっかけとなりました。そもそもなぜ留学したかなんですが、大学3年生の5月に、まわりのみんなが一斉にリクルートスーツを着て就活をしはじめて、キャンパスが真っ黒になったんですよね。まだ大学生活も半分だし、自分がどんな社会人になりたいかなんて決めれてないし、「このまま就職は無理」って思って逃げたくなって。高校の頃もまわりがいつの間にか「受験」に力を入れはじめたんですよね。大学になってもこれかと。つまり生き残り競争ですよね。だんだん他者のことを思いやることができない自分になっていることに気づいて、それも嫌だなと逃げる理由を探していたら「よし、留学だ」ってなったのがきっかけです。受験も就活も悪いというわけじゃないんですが、自分の中に違和感があったので、大学生活を1年休学して延長しようと。

デンマークを選んだ理由は、当時、大学の経済学部の「財政」のゼミで、貧困や格差について学んでいたんですが、そこで「北欧型福祉国家」という言葉が出てくるんですよ。そのひとつがデンマークですね。

デンマークってたくさん税金を払わないといけないけれど、医療や介護、大学が無償だったり、国から学生に補助金の給付があったりするんですよ。そうなると親は貯金をしなくて済む。要するに税金は高いいけれど国民の安心度も高いなと思ったんですよね。「税金を払うのが嫌じゃない国」ってどういう仕組みで成り立っているんだろう。実際に見てみたいと思って、デンマークを選びました。それに投票率も高いんですよね。

ちょうど大学2年の時に衆議院選挙があって、その頃、私もみなさんと同じように、若者の投票率ってどうやったら上がるんだろうとか、若い世代のひとが政治に関心を持つにはどうしたらいいのか、みたいなことを考えていて、インスタでたまたま流れて来た選挙のボランティア募集の広告を見てそれに応募してみたんですよね。社会勉強くらいのイメージだったんですが、友人にその話をしたら「大丈夫? 宗教じゃない?」って言われて⋯(笑)。

いわゆる「思想強いね」という扱いですよね。無関心でいた方が良い。無関心のフリをしていた方が良い。思想が強いと就活に響く。それってやっぱりおかしいなって思ったんですよね。だったら若者が政治に参加しやすく、投票率も高いデンマークにヒントをもらおうと思うようになったんですよね。違う世界が見たいなと。

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動けば「変わる」

でも厳密に言うと大学留学ではなく「*フォルケホイスコーレ」というデンマークの教育機関に通っていました。

*民主主義的思考を育てる、北欧独自の全寮制の教育機関。入学試験やテストがなく、17歳6カ月以上であれば入れる。

主にギャップイヤーのために利用しているひとも多かったです。デンマークの高校生ってそのまま卒業して大学に行くひとって少ないんですよ。自分が何をしたいのかをまずは考えて、その中に「大学」という選択肢が出てきたら進学する。そのためにバイトをしたり旅行してみたりするんですけど、「フォルケホイスコーレ」を選ぶひとも多いですね。

私が行っていたところは10代から20代の80人くらいが共同生活をしながら勉強をしたり、自分が何をやりたいのかを考えたり、やってみたいことがあったら挑戦するっていう場だったんですけど、そこで私はフィルムコミッションの授業を取ってました。みんなで iPhone で映画を作ってみるというだけなんですけどね(笑)。なんか「大人のための幼稚園」だなって思ってました。

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いい政治家がいないのは、
いい国民がいないから

あとはそもそも「選挙」を学びたくてデンマークに行っていたので、政党の青年部に出入りしていましたね。日本も実はそうなんですが、だいたいの政党には青年部や学生部っていうのがあって、あまり知られていないというか、まわりにいない印象があると思うんですけど、デンマークの場合だとクラスに数名はいるという感じなんですよね。政治に関心のあるひとたちがサークル感覚で集まったり活動をしたりする場所なので、未来の政治家を育てる感覚もあるし、実際にそこから政治家になっていった若者もいたりします。

デンマーク滞在中に、41歳の女性の首相が誕生したり、18歳の政治家が近くにいたりして、「こういう景色があるんだ」って。日本の大臣ってだいたい60歳以上で、40歳で大臣なんてやったら驚かれると思うんですけど、デンマークは30代の大臣もいて驚きましたし、気候変動がしっかりと国政選挙で争点になっているのも日本との違いですよね。若い子たちが「声を上げれば社会は変えられる」って思ってちゃんとデモに参加したり、選挙活動したりしている姿を見て「かっこいいな」って思ったし自分もそうなりたいなって思うようになりました。日本にいた時は「意味あるのかな?」と思っていたことが「意味あるんだ」って思えたんですよね。デモクラシー(民主主義)という言葉がたくさん出ていたのも印象的でした。

だって「授業がつまらない」ってみんなで先生に訴えて、プログラムごと変えさせちゃうんですよ(笑)。日本だと絶対にありえないですよね。先生に「授業がつまらない」なんて言ったら単位取れないかもしれないし、先生も怒りますよね。でもデンマークの場合は先生も怒らないし、民主主義のあるべき姿だって言うんですよね。学校に電子レンジがあるべきだって署名を集めているのも印象的でしたね。「動けば変わる」っていう体験をしているんですよね。

そんなデンマークでいろいろな景色を見て、勉強をして「日本に比べていい政治家が多いね」ってデンマークの友人に伝えたら「日本にいい政治家がいないのは、いい国民がいないからだ」って言われちゃったんですよね(笑)。つまり政治と国民は鏡のような関係で、優秀な政治家がいるのではなくて、国民が求め続けてきたからこそその要求に合った政治家が誕生するのであって、政治家任せではない国なんだなと。

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すぐにフォロワーが1万5000人に

とにかく感化されて帰国したのちにNO YOUTH NO JAPANを立ち上げて、デンマークのように若者がもっと選挙へ関心を示すようになったらと、デザインをやっている友人に協力してもらって、Instagram で発信するようになりました。そもそもどういう政党がいるんだっけ?とか、選挙って何をわかっていたらいいんだっけ?とか。選挙って全部理解していないといけないんじゃないかと足が遠のいてしまう若者が多いというので、「気になるテーマ」で見ていけばいいんじゃない?と伝えたり。

当時の選挙の2週間前にアカウントを立ち上げたんですけど、すぐにフォロワーが1万5000人とかになって、これを選挙後も続けていけばもっと理解が広がるのかなって思って団体にしました。

選挙のボランティアに行ったって伝えたら「宗教じゃない?」って言ってた友人も、NO YOUTH NO JAPAN の投稿を見て「選挙に行ったよ!」って言ってくれて、自分の伝え方を変えれば相手の動きも変わるんだっていうのは成功体験でしたね。

若い世代っていうのは「将来を担う存在」として捉えられることが多いですが、いまだって困りごとがあって、いまこうしたいっていう思いがある存在だっていうのをもっと知ってほしくて、NO YOUTH NO JAPAN を続けています。

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全体の50%以上が60代以上の男性

次に、政治分野のジェンダーギャップを私たちの世代で解消するための「FIFTYS PROJECT」の説明を少しさせていただきます。この団体では、20代30代の女性に立候補を呼びかけて一緒に応援していくという活動をやっているのですが、2023年の統一地方選挙では、参加者の中から29人の立候補者を立てて、24人を議員として地方議会に送り出すことができました。有権者も若い女性の力を求めていたのではないかなということがわかってきました。

ではなぜ地方議会なのかという話をします。国会の様子はよくテレビで紹介されると思うのですが、私は同じくらい地方の政治が大事と思います。というのも、全国には県議会とか市議会とか、町議会なんかがあって、その議員は全て選挙で選ばれています。地方議員はだいたい全国に3万人いると言われています。その3万人の中で全体の50%以上が60代以上の男性なんですね。議員って住民の代表のはずなんだけれど、その半分が60代以上の男性って、私たちの社会を構成する男女や世代の割合と全然合ってない。国会議員もそうなんですけど、地方議員の方がより高齢者が多いのかなと思います。20代30代の女性は1%未満なんです⋯。明らかに少ないのがわかると思います。

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もっとたくさんのひとが
生きやすくなるために

例えば会社単位で見た時には、男女が半々だったりすることは多いわけですよ。女性が多い会社も女性の管理職も増えています。男女の役割も変わってきているし、政治は男性だけのものという感覚は減っているはずなのに、政治の場はずっと変わらないのが現実。女性が政治家になるという選択ができないと思っているひとが私たちの世代にも多いということに問題意識を感じていました。だから「立候補しよう」と呼びかけてきました。

私たちは女性なら誰でも応援しようとは思っていなくて、ジェンダー平等の政策を進めたいと思っているひとが立候補しないと、ジェンダーギャップの解消にはならないかなと思います。例えば選択的夫婦別姓だったり、同性婚への賛成だったり、トランスジェンダー差別など、そういった問題解決に賛同するひとを応援しています。

それにそもそも選挙ってどうやったら立候補できるのかっていうのがわからないんで、勉強会を開いたり議員とのマッチングを行ったり、私もそもそもの入り口が選挙のボランティアだったりするので、そのきっかけになるようなイベントを開催しています。

「ハラスメントのない選挙活動を」というのもメッセージのひとつですね。

実際、学校の先生が子どもの居場所を作るために議員になったり、農業をやりながら議員として気候危機のための環境活動を行ったり、さまざまな方がさまざまな地域で挑戦しています。

私が「FIFTYS PROJECT」を通じて「ジェンダー平等」が大事だって思っているのは、基本、今の20代って教育の過程で差別されてきたんですよね。女性だからできないとか、セクハラや痴漢の被害を受けたり、進学校に男子校が多かったり、変だなと思うことが多いんですよね。デンマークでの気づきもありますが、やっぱりジェンダー平等が実現できれば、もっとたくさんのひとが生きやすくなると思うんですよね。政治の意思決定のバランスも変わっていくきっかけにもなると思います。

目標は来年の選挙で100名の候補者が出ればいいなって思って準備しています。ボランティアも増えればいいなと思ってがんばっています。

後編もお見逃しなく

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